
Still waters run deep
ワーク・イン・プログレスの根底を流れてきた想像力
静かな水は深く流れている。音が大きい川は浅く、静かに流れる川は深いということわざがある。これまでのワーク・イン・プログレスの活動の根底には、脈々と流れる自然の躍動とメディウム(素材/媒質)への意識が強く存在してきた。静かに、激動の時代の訪れを迎える現在だからこそ、芸術は自らの足元を支える近代をそれぞれの立ち位置から捉え直す機会を与えてくれる。
川上りえは、身体のうちにある鉄をまなざし、鉄の元素は血のなかにも流れていると語る。生命のかたちをストレートに捕まえ、無機質で変幻自在な金属のありようその根源に流れている普遍的なエネルギーを追求する。
笠見康大は、コピー用紙など日常のなかでたまたま手に取った紙辺やフォーマットを現実的な条件として取り込みながら色彩構成やドローイングを描く。空間のなかには、色彩の織りなす絵画の愉楽と紙のドライな資材性とのそれぞれに一期一会の折り合いが息づく。
林亨は、森を描き、そこに描かれたまっすぐな枝ぶりや雨だれの落水は空と土をつなぐ。樹木の幹の垂直や落葉の流れ、山塊のごつごつとした地面に重なる雲海は、具象的傾向を強めつつ、ドットや筆触のストロークという抽象絵画の言語は、山水の破墨となって具象から抽象の境へと視線を誘う。
大西洋は、認知心理学の図のなかから現れたような造形をモチーフとして、深層の底から浮かび上がってくる何者かを絵のなかに捉えてゆく。まなざしを向けた画面には、鏡に映るように反射的に結ばれる像がたゆたい、見る者の心を捉える。
大井敏恭は、記憶に浮かぶアイデアを紙に書いて絵画に貼り付けてゆく。イメージが現れるたび、そこに構築された絵画の地平に新しい波紋が広がり、画面を革新してゆく。
山下圭介は、木彫と絵のはざまにかたちを宿す暖かな色彩と木肌によるインスタレーションをつくる。樹木の年輪のなかに時間をかけて包み隠されたモノとしての彫刻は、ひとたび壁面へ移行すると壁のなかに埋もれている何かとして露わにされ、かたちや空間、色彩や光を包摂し、開いてゆく。
山崎正明は、対話による鑑賞を通して、他者の作品の鑑賞者としての自らを意識した対話、そして芸術家どうしの議論や勝敗を超えたより豊かな対話の機会をもたらしてきた。
近代芸術の巨匠からまなび、その先に続く光景は無数にあり、ときに川を流れる真水のように退屈なものかもしれない。まだ見ぬ世界を追いかける制作者たちの作品の深淵をのぞき込むまなざしをうけ、流れには生命が吹き込まれ、新しい世界が紐解かれてゆくだろう。
(text:塚崎美歩)
ニュース
最新情報

展覧会及びイベント、開催のお知らせ
北翔大学北方圏学術情報センタープロジェクト研究美術グループとWork in Progressの共同主催による美術展覧会も今回で10回目を迎えます。是非、ご高配賜りますようよろしくお願い申し上げます。
<展覧会会期>
2023年3月4日(土)〜21日(火祝) 10:00~18:00
最終日3月21日(火祝)のみ16:00で終了
2023年2月25日

展覧会が始まりました。
2023年3月4日

関連イベントが開催されました。
2023年3月5日

展覧会 2023
作品鑑賞








関連イベント
- 3月05日(日)北翔大学札幌円山キャンパスギャラリー
- 3月05日(日)北翔大学札幌円山キャンパスギャラリー
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電話:011-386-8011(北翔大学芸術学科 林)
